福岡県立春日高等学校は「進学校を目指す」という明確な目標を掲げ、「春日きらめき計画」や英語4技能を育成する英語教育「春日高校 CAN-DO リスト」など独自の取り組みが功を奏し、近年では進学実績を大幅に伸ばしています。また大学進学以上に、生徒の「卒業後」を見据えた進路指導を行っています。新時代にふさわしい教育活動の見直し・再構築に意欲を持って取り組む、チャレンジ精神旺盛な春日高校について迫ります。
福岡県立春日高等学校の概要
福岡県立春日高等学校は、福岡県春日市春日公園に位置する公立の普通科高校です。学校は福岡市中心部より30分圏内にあり、JR大野城駅より徒歩2分、西鉄白木原駅からは徒歩8分と最寄り駅にも近く、通学アクセスは抜群です。また、近くには福岡県営春日公園があり、緑豊かな環境が広がっています。
1978年の設立と県内でも比較的歴史の新しい学校ですが、進学校を目指すという明確な目標を掲げての独自の取り組みが功を奏し、近年は進学実績を大幅に伸ばしています。他方では、部活動の奨励や規範意識の育成などにも積極的で、調和のとれた人格形成教育を通して生徒を「未来に生きるたくましい」人間に育て上げることを目指しています。男女共学の高等学校で、高校入試の募集人数は普通科400名です(2019年度時点)。
福岡県立春日高等学校の基本情報
学校属性:公立・全日制課程普通科高校
校訓:「自主」「創造」
設立年:1978年
単位制/学年制:学年制
生徒数:1,265名(男子648名、女子617名)(2019年6月現在)
共学/別学:男女共学
学期:3学期制
帰国子女の受入:
国内大学進学実績:2018年度合格状況
(国公立):九州大学 25名、福岡教育大学 12名、佐賀大学 26名、熊本大学 21名 ほか
(私立):西南学院大学 188名、福岡大学 362名、早稲田大学 5名、慶應義塾大学 1名 ほか
福岡県立春日高等学校の特徴
高1ギャップの解消を目指す「春日きらめき計画」
本校の教育活動における柱となるのが「春日きらめき計画」です。春日きらめき計画は、10数年来の大幅な進学実績の向上により「進学校を目指す」という目標を達成した後、あらためて教育活動を見直し、今の時代に合ったものに再構築していこうという取り組みです。
本校では、「質の高い授業」「部活動の奨励」「挨拶・掃除の徹底」「規範意識の育成」という4つの項目を実践しています。生徒が文武両道の精神をもって勉学に励み、活力ある学校生活を送ることで「徳・知・体3つの調和ある人格形成」を図る狙いがあります。
特に重視されているのが、中学までとは激変する環境の変化に適応できずに脱落してしまう生徒の問題、いわゆる高1ギャップの解消です。「高校入学からの1学期間は、高校生活を左右する最も重要な時期である」との考えの下、1年4月の「きらめきキャンプ」での集団行動による協調性の養成に始まり、その後の教科オリエンテーション期間では、英・国・数の授業における予習→授業→復習のサイクルの習得が目指されます。入学後の早い段階から勉強はもちろん、高校生活・礼儀・進路意識などさまざまな場面からの導入期指導を計画的に実施していきます。
使える英語を目指す「春日高校 CAN-DO リスト」の策定
本校では、「春日高校 CAN-DO リスト(英語でできるようになろうリスト)」を作り、英語4技能(「読む」「書く」「聞く」「話す」)全てで「使える英語」を育成する英語教育の取り組みを行っています。
このリストでは、高校3学年を6つのStepに分割し、4技能全てにつき具体的な目標を設定します。たとえばLISTENINGのStep1(1学年前半)では「ネイティブ・スピーカーが1文ずつ切ってゆっくり話をすれば、話の内容をおおよそ理解できる」「短い会話を聞いてその内容を理解できる」という目標が設定されます。
Step6(3学年後半)になると、「200語程度のなじみのない内容(時事問題や社会的な話題)を聞いて、その概要をとらえることができる」というようにかなり高度な目標になり、段階を踏んで着実に各技能をステップアップできるようにリスト化されています。
自己実現力を育てる「卒業後」を見据えた進路指導
本校ではまず、入学直後からの高1ギャップの解消を最重要課題として位置づけ、さまざまな取り組みを実施していきますが、「導入期」後の課程においても、生徒の「卒業後」を見据えた進路指導を続けていきます。生徒たちが挑む大学入試は付け焼き刃の勉強では太刀打ちできません。そのため、本校はテストにおける「見える学力」だけでなく、正しい基本的生活習慣によって培われる「見えない学力」を含めた、いわば豊かな人間性を伴った自己実現力を培う必要があると考えています。
本校では、充実した課外授業の実施によって部活動に取り組みつつ、予備校などに通わなくても、大学入試およびその後の学びに対応できる学力を身につけることを目指しています。
「朝課外」と呼ばれる始業時間前の課外授業を、希望者を対象に通年実施して基礎学力の向上を図ります。また、「土曜活用」という70分間の3時限授業を年間10回程度行っており、大学受験に必要な基礎学力・応用力を身につけようと考えて参加する1年生の姿も珍しくありません。
さらに、4月から11月の2学期末考査前までの間行われる「放課後課外」では、大学進学を志望する3年生を対象に、発展的演習による大学入試への対応に万全を期しており、部活動生も引退後は積極的に参加しています。
また、夏・冬・春の長期休業中にも、各学年に学習目標が設定された課外授業が実施されます。課外授業というまとまった時間の中で、これまでに学んだことを振り返ること、得意科目をさらに伸ばし、苦手分野を克服することを計画的に実行していく狙いがあります。
そして、「将来を具体的に思い描くこと」で「学び」のモチベーションが飛躍的に高まるという考えに立ち、学校全体を挙げてのキャリア教育を計画的に進めています。各教科の授業時間はもちろん、総合的な学習の時間や多様な学校行事を通して、学年ごとにスローガンを定めて、生徒たちが各自に相応しい進路意識を高めていくことを目標としています。
「英語と楽しく触れあおう!」 がモットーのESS部の活動
「英語と楽しく触れあおう!」をモットーに掲げるESS部の存在も見逃せません。週2日の活動を通して、学習に役立てることはもちろん、明るく活発な部活動により学校生活をエンジョイできるようになると言われており、文化祭での活躍は多くの生徒の知るところです。
ESS部は、さまざまなスピーチコンテストへの参加にも積極的です。過去には、「福岡県高等学校英語弁論・暗唱大会」において、1年生部員がアメリカ合衆国の当時の大統領であるバラク・オバマ氏のスピーチを暗唱し、希望に満ちた内容を流暢な英語スピーチで行っています。スピーチの暗唱に取り組むことを通じて生徒らは、話すという実践的な英語力を磨くだけでなく、スピーチの内容に触れることで努力やチャレンジすることの大切さを自発的に学んでいきます。
他校のESS部との交流にも積極的です。2020年実施の第10回・九州大学・留学生交流会では、福岡大学附属大濠高校との英語ディベートの交流試合を行い、エジプト・イランを始めとする留学生による審査を仰ぐなど、国際交流の機会を経験することで今後の英語ディベート大会や英作文コンテストなどへの出場を目指した活動への意欲を高めています。
まとめ
本校は、県内の古くからある有名進学校、たとえば修猷館高等学校を始めとする福岡御三家と言われる学校とは異なり、昭和後期設立という比較的歴史の浅い学校です。その中で「進学校を目指す」というはっきりとした目標を掲げ、自らのアイデンティティを確立することに成功しました。
また、当初の目標を達成した後もそこで立ち止まることなく、新時代にふさわしい教育活動の見直し・再構築に意欲を持って取り組む、チャレンジ精神旺盛な学校です。
さまざまな意欲的な取り組み・活動を通して、生徒らに大学受験突破に必要な学力を身につけさせると同時に、大学進学後、そして社会に出てから求められる、豊かな人間性を伴った自己実現力を併せ持つ人材に育て上げようと考えています。
最近のコメント