福岡県立修猷館高等学校は、古くは英語専修学校であったことを知っていますか？現在は公立校として県内でも他の追随を許さない大学進学実績をあげながらも、その教育内容は受験対策一辺倒ではありません。海外派遣プログラムやさまざまな講演会、海外学校との交流試合など、国際交流の機会など「世のため人のため」に尽くす人材の養成する修猷館高等学校の魅力に迫ります。
修猷館高等学校の概要
福岡県立修猷館（しゅうゆうかん）高等学校は、福岡市西部で最も栄える街・西新にあり、地下鉄「西新」駅より徒歩5分のところに位置しています。西新は、ターミナル駅の博多駅から地下鉄で15分ほど、九州最大の繁華街である天神からは8分と交通の便に恵まれています。この街は学校・図書館・博物館などが集まる文教地区としても知られており、修猷館のすぐ隣には西南学院大学があります。
修猷館は、江戸時代・1784年開館の福岡藩藩校を起源に持つ国内でも屈指の伝統校です。毎年、地元の九州大学・西南学院大学をはじめ全国の難関大学に多くの合格者を輩出する福岡県随一の公立の名門進学校として、これまで各界に多彩な人材を輩出すると同時に、運動会や文化祭、そして部活動が盛んな文武両道の学校としても広くその名を知られています。男女共学の高等学校で、高校入試の募集人数は普通科440名です（2019年）。
修猷館高等学校の基本情報
学校属性：公立・全日制課程普通科高校
校訓に準ずる言葉：「不羈独立」「質朴剛健」「自由闊達」「Sure, you can!」
設立年：1784年
単位制・学年制：学年制
生徒数：男子656名、女子621名（2019年5月現在）
共学/別学：男女共学
学期：2学期制
帰国子女の受入：
国内大学進学実績：九州大学94名、京都大学10名、東京大5名、早慶21名など（2019年度）
海外大学進学実績：
修猷館高等学校の特徴
明治期に英語専修修猷館の名で再出発
修猷館はもともと江戸期に学問奨励に熱心な黒田家の藩校として開校しましたが、明治時代になって英語専修修猷館という校名で再出発を果たします。その名の通り、国語以外の科目は英語で行われました。校舎とは別棟にある資料館に残る古い英語の教科書からも窺えるように、授業内容は本格的で昨今注目を集めるイマージョン教育の先駆けとも言え、視察に訪れた初代文部大臣の森有礼は「天下の模範中学」と褒め称えたそうです。
全人教育と大学受験の両立
現在の修猷館の教育課程では、生徒たちを「世のため人のため」に尽くす人材に育て上げるために、知育に偏らず調和のとれた人格形成を目指す全人教育に力点が置かれています。たとえば、クラス単位での「夢を語り、今を語る」グループワークでは、積極的に発言する生徒たちによる自由討論を通して、修猷館伝統の「語りの文化」にも繋がる、傾聴力・発信力・リーダーシップの醸成が図られました。このように、受験に必要だから学ぶのではなく、「世のため人のため」に必要だから学ぶことを支える環境が整っています。
大学受験への対応としては、2年次から文系と理系に分けられるほか、超難関大学への進学希望者を対象とした英数クラスを文系と理系それぞれに設置しています。また、理系には、医学部医学科進学希望者向けの理系Ⅱ類クラスを設け、さまざまな取り組みを通して医師としての高い志しを育んでいきます。授業は、生徒が主体的に学習できるよう工夫されたシラバス（講義などの内容や進め方を示す計画書）をもとに、選りすぐりの教材とよく練られた質の高い内容で生徒の知的好奇心を満たしながら進められます。また、生徒の自学自習をサポートする教科センターを設置して、質疑応答や必要に応じて個別指導も行っています。
このように修猷館は、人格を磨く全人教育と大学受験教育との両立を、高い次元で実現しています。多くの進学校と異なり、入試に関係のない教科を切り捨てたり、私大文系向けの英、国、社特化型のカリキュラムを組むクラス編成を採ったりすることはありません。
世界に打って出る意欲を育む海外派遣プログラムとESS部の活動
修猷館には、海外派遣プログラムも用意されています。2019年度は12名の研修生が米国カリフォルニア州に派遣され、シリコンバレーでのベンチャー企業訪問や現地で活躍する起業家を交えたディスカッション・プレゼンテーションを通して、世界に打って出る意欲を育んでいます。
また、ESS部では、メインイベントである夏の英語劇大会で「アニー」の上演や、福岡市姉妹都市杯英語弁論大会に参加しています。これらの活動を通して、聴く・話すという実践的な英語力が養われることで、生徒たちは将来世界に飛び出していくための意欲を高めていきます。
外交官に求められる判断力とリーダーシップを学ぶ外務省主催の高校講座の開催
2018年度には、「世界の中の日本」を講演テーマとする高校講座が外務省主催で開かれました。この講座を通して、生徒たちは外交官という職業の具体的なイメージを掴み、国際政治への関心を高めました。また、外務省だけでなくアメリカ国務省の話も合わせて聴くことで、異なる立場からのものの見方を知り、日々の目標設定と現状分析の大切さや、外交官に求められる判断力とリーダーシップの重要性を学んでいます。本講義で教えられたチャレンジ精神の大切さを胸に、生徒たちは将来の夢に向かって努力していくことでしょう。
海外から講師を招いて行う英語の講演会
2017年5月には、テンプル大学ジャパンキャンパス（TUJ）学長の講演が行われました。「Japanese Youth and Globalization（日本の若者とグローバル化）」と題されたこの講演は、英語のみの問題提起のパートと日本語抄訳を取り入れた後半とを合わせて50分。わが国の国際社会での立場やこれから国際社会に出ていく人材が身につけておくべき能力など、実践的で密度の濃いお話を聴くことができました。
学長の「日本のグローバル化は君たちの腕にかかっている！」という激励に、多くの生徒たちが深く頷いていたのが印象的でした。講演後の自由参加の座談会では、10人ほどの生徒が志望校や将来の夢を英語で語り、あらためて自らの決意を確かめているように感じられました。
英語で紙芝居を披露して原爆や戦争について考えるきっかけを作る
2019年には、1年生の有志で集まった約20人が、広島と長崎の2度にわたる被爆体験を持つ故山口彊（つとむ）さんの体験をつづった紙芝居を生徒・教員ら約440人を前に英語で披露しました。
この試みは、ある生徒が英語の教科書に山口さんの体験が掲載されていたのを機に、「もっと詳しく知ってほしい」と思い立ったことがきっかけでした。「ヒロシマ・ナガサキ 二重被爆」という紙芝居には英訳がついていたので、英語教諭の指導を仰ぎながら、夏休みを使って16分ほどの動画にまとめ、学年集会でスクリーン上映を行いました。
英国イートン・カレッジとのラグビー交流試合
修猷館は伝統あるラグビーの強豪校としても知られ、旧制中学時代からの良きライバル・県立福岡高校との間で毎年天皇誕生日に福高定期戦を行うなど盛んに活動しています。
2019年7月に、修猷館と英国イートン・カレッジとのラグビー交流試合が行われました。イートン・カレッジは1440年創設の男子全寮制のパブリックスクールで、数多くのOBたちがイギリスの各界で指導層を構成していることで有名です。また、イートン・カレッジは、日本でのラグビー通じた国際交流に積極的な学校としても知られています。
英国イートン・カレッジと対戦してラグビーの実力を確かめ合い、試合後のアフターマッチファンクションを通して親睦を深め、今後のさらなる交流の深化を約束しました。
まとめ
修猷館は、古くは英語専修学校として高度の英語教育を誇った時代がありました。そして、現在は公立校として県内でも他の追随を許さない大学進学実績をあげながらも、その教育内容は受験対策一辺倒ではありません。「世のため人のため」に尽くす人材の養成を目標として、生徒らは行事や部活動に熱心に取り組む中で人格を磨いていき、社会に出てから求められるリーダーシップを身につけていくことが期待されています。
海外派遣プログラムやさまざまな講演会、海外学校との交流試合など、国際交流の機会にも恵まれており、これからも伝統校としてわが国、そして世界で活躍する人材を生み出していくことは間違いないでしょう。
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